国立天文台、理化学研究所、工学院大学、鹿児島大学、足利大学、茨城大学の研究者からなるグループは、アルマ望遠鏡を用いた観測により、惑星が作られる母体である”原始惑星系円盤”における磁場の構造と強度を見積もることに初めて成功しました。本学からは、システム情報分野の塚越 崇 准教授が研究グループに参加しています。
アルマ望遠鏡は、国際協力のもとチリに建設された大型の電波望遠鏡です。天体が発する電波を捉えるためのアンテナ群で構成されており、世界最高性能を誇ります。取得される膨大な観測データから微弱な天体信号を取り出し、天体画像を作り出すには、画像合成技術やノイズリダクション技術といった情報工学の知見が生かされます。
宇宙において、磁場は様々な役割を担っています。例えば、恒星の周囲に惑星が形成される過程においては、惑星のもととなる物質の動きを決める重要な要素の一つとなっています。惑星が形成される土台は、”原始惑星系円盤”と呼ばれる恒星を取り巻く円盤状構造であり、それを取り巻く磁場の様子を明らかにすることが、惑星形成の理解にとって重要となります。しかしこれまで、直接は見えない磁場の様子を調べることは非常に困難でした。
今回、研究グループは、若い恒星『HD 142527』の周囲に存在する、原始惑星系円盤と呼ばれる構造から発せられる電波の様子を、アルマ望遠鏡を用いて詳細に観測しました。そして、これまでに得られている様々な波長のデータと組み合わせ、円盤の磁場を見積もる新たな方法を開発し、円盤内における磁場の強さと構造を推定することに成功しました。ここから、円盤の中には強い乱流が作られている可能性や、また、これまで理論的に予想されていなかった磁場の構造が存在する可能性が示唆されました。これらの結果は、磁場が惑星形成に与える影響を調べる今後の研究を導く重要な観測成果となります。
この成果は、2月5日に、Nature Astronomy に掲載されました。
詳細は、以下の国立天文台によるページをご参照ください。